「Girl」
(ベルギー/2018年/監督:ルーカス・ドン/105分)
映画界の新星ルーカス・ドン監督による初長編作品「Girl」
実話をもとに作られた作品。
ある日ベルギーの新聞に掲載されていた記事が
ルーカス・ドン監督の目に留まる。
ノラ・モンセクールと言うバレリーナを目指す少女は
生物学的に男性として生まれたが、自分は女性だと確信し
15歳にして自身のセクシャリティを公表。
女性として自分の夢を叶えるために突き進んだ。
ルーカス・ドン監督も社会が求める性役割に対して
不満を抱えながら幼少期を過ごしたひとりだった。
ノラの勇気ある行動に心打たれ何度もアプローチを重ね
およそ10年と言う月日をかけてこの作品実現へと漕ぎ着けたのが本作。
思春期に起こる心と身体に対する違和感や葛藤、
自身の将来に向けた漠然とした不安など・・
この映画にはジェンダー問題だけではない
様々な苦悩が絡み合い主人公の繊細で複雑な心情が描かれている。
本作での主人公・ララを演じたのは
ベルギーのバレエ学校に通う青年ビクトール・ポルスター。
彼はこの作品が映画デビューでしたが、
モデルとなったノラをララとして完全に存在させた。
性を超越した圧倒的な美しさがあり
この映画は彼無しにはありえなかったと思う。
彼はシスジェンダーでありながら
たったの三ヶ月で女性の踊りを覚え、完璧にララになりきって本作に挑んだと言うのだから
本当に驚いた。
(バレエでは男性と女性の踊りは全く違う。まず男性はトゥシューズを履かない。)
近年ハリウッドを中心としたエンタメ業界では
LGBTQに関する議論が活性化しており
トランスジェンダーをシスジェンダーが演じることへの意見の相違が炎上の発端となっており、本作も例外ではなかった。
しかし、映画のモデルとなったノラが
「私の物語は、シスジェンダーの監督が生み出したファンタジーなんかじゃない。
ララの物語は私の物語なの。」と言う言葉がこの問題を一蹴したと思った。
だってこれは、
誰しもが成長過程の中で
心と身体に感じた違和感への葛藤や
この映画を観て心動かされた全ての「私」の物語なのだと思うから。
素晴らしい作品に出会えたことに感謝。
これからのルーカス・ドン監督の作品にも期待したいなぁと
思いました。
Sisterでこの作品とコラボレーションできたことは
とても嬉しいです。
7月5日、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町
Bunkamuraル・シネマほか
全国公開です。